神戸地方裁判所 昭和24年(行)62号 判決
原告 吉井三治郎 外二十五名
被告 兵庫縣知事
一、主 文
被告が別紙目録記載の農地につき昭和二十四年六月二十七日付兵庫縣報に告示してなした五年間賣渡を保留する旨の指定はこれを取消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
二、請求の趣旨
主文同旨。
三、事 実
原告ら訴訟代理人は、その請求の原因として、被告は、昭和二十四年六月二十七日付兵庫縣報において、自作農創設特別措置法施行規則第七條の二の三に基き賣渡を五年間留保する農地として別紙目録記載の農地を含む瓦木中央地区を指定する旨告示した。しかしながら、原告らは、これよりさき、右農地につき、被告からその賣渡の時期をいづれも昭和二十三年十二月二日と定めた賣渡通知書の交付を受け、かつその対價をも支拂つて、それぞれ右農地の所有権を取得したものである。しかれば、被告の前記指定処分は、原告らの所有農地に対しなした違法があるのみならず、具体的に農地の所在地、地目、および面積を指示せず、包括的に一地域を指定した違法があるから、これが取消を求めるため、本訴に及んだ次第である、と述べた。
被告指定代理人は、被告らの請求を棄却する。訴訟費用は原告らの負担とする。との判決を求め、答弁として、原告主張の指定は賣渡を保男することは別個の処分であつて、縣知事が指定した農地につき賣渡を保留するか否かは自作農創設特別措置法第十八條の規定から市町村農地委員会の権限に属するものである。從つて、本件の場合、被告の指定の行われる以前に、西宮市農地委員会が賣渡計画を定め、ついで被告がこれに基いて原告等に対し賣渡通知書を交付している以上、被告の指定により原告等は何等その利益を害されない。そこで原告らの請求は権利保護の利益を欠くものとして棄却さるべきものである、と述べた。
四、理 由
原告主張の事実は全部被告の認めるところである。從つて、被告が別紙目録記載の農地につきなした賣渡留保の指定は、原告らの所有に属し国の所有に属しない農地を対象とするものであるから法律上不能を内容とする行爲として、たゞ單に違法であると言うにとゞまらず、本來無効な処分であると言わねばならぬ。しかして被告も右指定が原告等に対して効力のないことを自認するとはいえ、被告は自らさきに本件農地につき原告等に対し賣渡通知書を交付しながら、その後賣渡の留保指定を公告し、前後矛盾する処分を敢てしているから、原告らとしては後の賣渡留保指定により前の賣渡処分が黙示的に取消されたのではないかとの危ぐの念をいだくことは推測するに難くなく、かつ賣渡留保の指定も、いやしくも行政行爲として形式上存在する以上一應は有効なものと推測され実際上有効な行政行爲と同様に取扱われる恐があるから、その無効であることを明白にするため、形式上これを取消す必要のあることは勿論である。そこで、原告等の請求は全部正当としてこれを認容し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九條を適用して、主文の通り判決する。
(裁判官 古川靜夫 中島誠二 保津寛)
(目録省略)